「繊維機械について」〜紡ぐ・織る・編む〜
■■■■■1.紡 績 機
紡績とは、綿花,羊毛,蚕糸または化学繊維のステープルなど,比較的短い繊維から糸を作ることです。
長繊維の場合は,生糸では製糸,化学繊維では紡糸といって区別しています。 紡績では、
@ 繊維をほぐす
A 繊維の方向をそろえる
B 繊維束を引き伸ばす
C 繊維束に撚りをかける
の四つが主要な工程です。
全自動紡績システムの誕生
1970年代の後半になると各紡績機械はメカトロ技術を取り入れた自動化が進むとともに、コンピュータ制御
による搬送の自動化が進みました。
1980年代に入ると、全自動紡績システムを開発し、高速化と省力化を求める紡績業界の要望にこたえました。
全自動紡績システムでは、TAS(Toyota Automated Spinning System)式連続自動紡績法で確立した混打綿・
梳綿(そめん)・練条間の工程連結をベースに、その後の技術開発によって粗紡・精紡・ワインダー間の全工程を
連結しました。自動機や自動搬送装置の採用により、従来は工程の間で作業者が行っていた各ボビンの脱着や
搬送の作業を無くしました。
■■■(1)混打綿
綿紡式紡績の前紡工程で用いられる一連の装置。(写真1)
種類の異なる綿塊を混合し、ビータ (板状,刃状,ピン状などの突起物をもつ回転体) などを用いて綿塊を打ち、
これをほぐすとともに、綿塊中に含まれている不純物を取除いたのち、ラップと呼ばれる帯状の繊維集合体をつくります。
(写真1 混打綿) |
■■■(2)カーディング
梳綿(そめん)とは、採取した繊維を櫛で均して、繊維方向が揃った綿状の塊にする作業で、カーディング、カード処理
(Carding) とも言います。(写真2)繊維は採取した状態のままか、あるいは水洗してから梳綿される。さまざまな繊維が
梳綿でき、一般的には綿、羊毛等に使用されることが多いです。
■■■(3)コーミング
ひも状の連続したスライバを作ります。コーミングcombing(精梳綿)では、くしで髪をすくように針で繊維をくしけずって
平行に伸ばし、短繊維、ネップnep(繊維の小さな塊)、雑物を取り去ります。(写真3) スライバ中に短繊維が残っていると
後のドラフト工程でむらを生じやすく、ネップや雑物の存在は糸の品質を低下させるからです。
(写真2 カーディング(カード処理)) | (写真3 コーミング) |
■■■(4)練条
紡績準備工程として繊維の塊を分解し、雑物や短繊維を除き、繊維をそろえ、紐状のスライバにしたものを,数本ずつ
集めてさらに太さを均一にします。(写真4)
(写真4 練条) |
■■■(5)粗紡
練条機でつくられたスライバと呼ばれる太い繊維束を引伸ばして (ドラフトして) 細くするとともに,あまい撚 (よ) りを与えて
粗糸とし,巻取る紡績工程です。(写真5)
■■■(6)精紡
粗糸を引伸ばして細い繊維束とし,これに所要の撚りを与えて単糸にして巻取ります。(写真6)
リング精紡機,フライヤ精紡機,キャップ精紡機,ミュール精紡機などがあり,現在最も広く用いられるのはリング精紡機である。
最新型のリング精紡機では、特別な装置や電子制御技術の発達により、毛羽の少ないコンパクト糸や細い部分と太い部分に
撚りを変化させたスラブ糸、または、単糸の中に2種類の糸を切り替えながら紡出するモザイク糸といった様々な種類の糸を、
紡出することが可能となりました。
(写真5 粗紡) | (写真6 精紡) |
■■■(7)巻糸
空気の力で糸をつなぐ技術・・「最新型自動ワインダー」
自動ワインダーは、精紡糸の品質を整えながら、大きなパッケージに巻き上げていきます。紡績の最終工程として糸の品質を
決定する役割を担うとともに、織機や編機などテキスタイルづくりの出発点となります。(写真7)
このような自動ワインダーの歴史を塗り替えたのは「空気の力で糸をつなぐ技術」です。この技術により生まれた結び目のない
一本の糸は、世界中の糸づくり、テキスタイルづくりを一変しました。
最新型自動ワインダーは、最速毎分2200b(時速130Km)を超えるハイスピードで糸を巻き上げます。10年前の従来機と比べ
ても、マッハスプライサー搭載・最新型自動ワインダー速度は10km、生産性は15%向上するとともに10%の省エネ化も実現し
ました。巻いた糸の長さは300kmで、京都から静岡までになります。さらに、糸の張力を監視し、フィードバック制御を行う機構
などを開発し、巻き上げる糸の品質にも徹底的にこだわっています。競合する欧州企業の一歩先を行くモデルとして、世界市
場を席巻しています。
(写真7 最新型自動ワインダー) |